ライチーとランプータン
ベトナムの宴席は気配りに満ちている。
米の焼酎をグラスに一杯。まず自分が半分飲み、
残った半分を相手に差し出す。一応飲む前に、
杯を渡す相手を指名する習わしらしい。
グラスに酒を満たし、相手の方に突き出すようにしながら、
目で「飲んでね」とサインを送る。送られた方は鷹揚にうなづきを
返すか、あわてて隣の人を指さして逃げたりするわけだ。
本題は杯を干した後。一杯飲むと、隣からランプータンが差し出される。
「こうすると酔わないよ」と目が言っている。
そして、次の一杯。今度はライチーが渡される。
ランプータン、ライチーと交互に来る。
気配りにあふれているなあと思っていると、もう少し意味が深かった。
ライチーはベトナム北部でしか採れず、ランプータンは南部でしか採れない
のだそうだ。ただし旬は同じ時期。南からランプータンが北に運ばれ、
北からはライチーが南に運ばれる。
この二つの果物がベトナムの食卓にさりげなく並んでいるのは、
あの南北に分かれた長い戦争に勝利した故であったのだ。
「意識してこの二つの果物を食卓に並べているんですか」と聞いてみた。
「ふふふ」と和やかな笑顔。
そうか、あの徹底したゲリラ戦だもの、
ライチーやランプータンを運ぶことなど、武器を運ぶことに比べれば
お茶の子さいさいだったんだろうね。
(やまだ)
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