1999年、探検家の関野吉晴は、南米最南端から人類誕生の地アフリカを目指す旅の途中モンゴルを訪れ、大草原を自在に馬で駈けるひとりの少女と出会う。
思わずカメラを構えた関野に少女は言い放った。

「写真撮るなら、こっちに来ないで!」
少女はプージェ−といった。当時6歳。自立心が強く、決して大人に媚びない態度に、関野は遊牧民の理想像を重ねてしまう。
足繁く訪ねて来る関野をプージェーの家族は温かく受け入れてくれた。
それから続いた5年間の交流の中で、関野は変わり行くモンゴルの現実を目の当たりにする。
社会主義にかわって導入された市場経済は貧富の格差を生み、遊牧民にとっては致命的な家畜泥棒が横行し、プージェーの家もその犠牲になる。

そして、大切な草原では市場価値の高いヤギの数を増やしすぎてしまったため、草が枯れ、モンゴルの家畜総数の10%が餓死してしまった。
そんな近代化の波に飲み込まれつつある家族を悲劇が襲う。
母の死、そして・・・これは、時代の波に翻弄されるモンゴル遊牧民5年間の記録である。